ブラジルにおける高速道路・橋のモニタリング

ブラジルにおける高速道路・橋のモニタリング

ブラジル全国運輸連合(CNT)が11万4,000キロメートル以上を対象に実施した2025年の全国道路調査によると、調査対象となった道路のうち、状態が「良好」または「最適」と評価されたのは約38%にとどまります。同調査では、事故や重大なインフラ障害のリスクが最も高い「危険箇所」も2,100カ所以上確認されました。こうした状況を最も端的に示しているのが橋です。2026年6月には、アクレ州セナ・マドゥレイラでイアコ川に架かる開通間もない橋が崩落し、4人が負傷しました。その18カ月前には、マラニョン州とトカンチンス州を結ぶ1960年代建設のジュセリーノ・クビチェック・デ・オリヴェイラ橋が崩落し、乗用車やトラックがトカンチンス川に転落、少なくとも9人が亡くなっています。

ブラジルの道路網の多くは政府が運営しています。2025年時点で、民間コンセッション事業者が31件の契約のもと連邦道路約1万5,800キロメートルを運営しており、残りの大半は国家交通インフラ局(DNIT)が管理しています。コンセッション事業者は道路本体に加え、道路沿いの用地も管理しており、コロンビアでも交通当局のもとで同様の仕組みが採られています。定期点検は主に路面を対象としていますが、道路の下や周辺で起きている変化を把握するのははるかに困難です。

干渉合成開口レーダー(InSAR)は、地表の変動を宇宙からミリ単位で計測する技術であり、Synspectiveはすでにこの解析サービスを提供しています。レーダー衛星は上空を通過するたびに同じ地点までの距離を記録します。その計測値を時系列で比較することで、道路や橋の基礎、あるいはその脇の斜面が沈下しているのか隆起しているのか、またその速度はどの程度かを把握できます。一度の解析で数千キロメートルの道路と数千もの橋梁をカバーでき、現地調査では到底対応できない規模を網羅できます。大型構造物にはそれぞれ固有の安全基準値があり、InSARは地盤がその基準値に向かってどれほどの速さで動いているかを示します。

最適なセンサーは現場によって異なります。Xバンドはコンクリートやアスファルト上で最も高い性能を発揮し、細部まで捉えることができます。一方、Lバンドは植生を透過して地表面まで届くため、ブラジルやコロンビアの多くの地域に見られる、起伏が多く森林に覆われた地形で重要な役割を果たします。バンドと同様に重要なのが解像度です。高解像度の解析では、同じ区間の道路上にはるかに多くの計測点を配置でき、一つの車線や橋の取付部といった局所的な小さな変化も捉えることができます。これにより、道路網全体を定期的にカバーしつつ、変動が見られた箇所を重点的に監視する、という階層的なモニタリングが可能になります。

(図)複数車線の高速道路上の計測点。解像度20メートル(左)と3メートル(右)の比較。解像度が高いほど、道路上に多くの計測点が配置される。

SynspectiveはDNITと協力し、ゴイアス州フォルモーザ近郊の連邦道路の一区間を対象に、2025年1月から2026年4月までの期間で解析を行いました。解析範囲は約107平方キロメートルに及び、道路沿いに90万点以上の計測点を配置しました。その結果、道路インフラに沿った沈下傾向が確認されました。これは、放置すれば陥没や路盤の損壊につながりかねない、緩やかで継続的な変化です。

(図)ゴイアス州フォルモーザ近郊の連邦道路沿いのInSAR解析(2025年1月〜2026年4月)。オレンジと赤は地盤の沈下を示している。

道路そのものは、全体像の一部にすぎません。別の区間では、路面にはほとんど変動が見られない一方で、その脇の地盤が約5cm沈下していました。このような地形では、道路の隣接地盤が崩れ、道路を巻き込んで損壊させるケースが少なくありません。こうした道路沿いの用地はコンセッション事業者の管理範囲であり、ここをモニタリングすることで、変動が資産に及ぶ前に対策を講じることができます。

(図)ブラジルの高速道路の一区間。路面は安定している一方、その脇の地盤は約5cm沈下している。

セナ・マドゥレイラの橋は、崩落前にどのような兆候が現れうるかを示しています。Synspectiveはクライアントとは独立した立場で、この構造物を対象に1年分のアーカイブデータを独自に解析しました。その結果、2025年半ば以降、両岸の計測点が互いに逆方向へ動いていたことが分かりました。一方の端は約2cm沈下し、もう一方は約1.5cm隆起しており、1年間で両端の差は約3.5cmに広がっていました。このような相反する変動は、構造物に大きな負荷を与えます。構造物ごとに基準値は異なり、その多くは公開されていないため、本データからいつ対処すべきだったかを判断することはできません。しかし、橋が崩落する数カ月前から変動が計測可能だったことは明らかです。

(図)アクレ州セナ・マドゥレイラのイアコ川両岸の計測点(2025年4月〜2026年4月)。橋の一方の端が沈下し、もう一方が隆起している。

InSARは、より広範なモニタリング体制の一部として活用することで最も効果を発揮します。地中に設置する計測機器や現地点検にはそれぞれの役割があり、衛星による計測は、ブラジルほどの規模の道路網全体を見渡すという、地上チームでは実現できない視点をもたらします。高速道路や橋梁の建設には数百万ドルから数十億ドルの費用がかかることもあり、数千万ドル規模の補修を未然に防ぐ早期警戒は、それだけで十分に投資に見合う価値があります。日本では、こうした取り組みがすでに定着しています。国のガイドラインで道路の沈下に関する基準値が定められており、道路管理者は基準値を超えた時点で対策を講じています。

ラテンアメリカでの需要は急速に高まっています。ブラジルの高速道路コンセッション事業者はすでにInSARを活用しており、高速道路やインフラのモニタリングに関する提案依頼(RFP)も頻繁に出されています。現在、SynspectiveのInSAR解析は複数の衛星データを活用しています。さらに、自社のStriXコンステレーションの統合も進めており、変動が基準値に近づいている地域に対して、より高解像度かつ高頻度のモニタリングを提供していく予定です。

鉱業分野では、ブラジルで多数の犠牲者を出したダム決壊事故が相次いだことを受けて、こうしたモニタリングが導入されました。しかし高速道路の管理者は被害が起こる前に行動することができます時間、コスト、補修費の削減という効果だけで、導入の意義は十分に示されています。

<プロジェクト担当者>
Tata Lacale Canalは、リオデジャネイロを拠点にSynspectiveのラテンアメリカ事業を率いています。同地域における商用地球観測およびSARデータサービスの分野で、20年以上の経験を有しています。
Andre Gavlakは、Synspective USAのセールスエンジニアとして、ラテンアメリカにおける事業拡大を推進しています。地理空間情報およびリモートセンシング分野で20年以上の経験を持ち、自然地理学の博士号とリモートセンシング・GISの修士号を取得しています。

<参考>
Poder360, “Qualidade das rodovias melhora em 2025, mas 62% seguem problemáticas,” December 17, 2025.
Agência Nacional de Transportes Terrestres (ANTT), “Relatório de Gestão 2025,” April 2026.
SBT News, “Ponte nova de R$ 36 milhões desaba no interior do Acre,” June 6, 2026.
The Associated Press, “At least 9 people died when a bridge collapsed in Brazil,” NPR, December 27, 2024.